PubMedからみるカイロプラクティックの研究状況

全日本カイロプラクティック学会
吉野俊司 山崎善秀 長尾正博

【目的】

手技療法はRCTが難しいとされているが、PubMedではカイロプラクティック分野でもRCTによる研究が掲載されている。
WHOでも規定されている神経筋骨格系の専門分野としてのカイロプラクティックに関するRCTの文献調査から、統合医療におけるカイロプラクティックの役割を考察する。

【方法】

Pubmedを用い、”Chiropractic”[Mesh]にAND機能を使い、2014年12月31日までのRCTを選択し検索した。

【結果】

検索結果106件のうち、安全性2件、有効性46件、経済性5件(重複含む)であった。
有効性46件の内38件が脊椎変位による疾患で、特に「腰痛」を扱ったものが17件と多く、頚部痛、脊椎痛、頭痛が続いた。また慢性小児喘息・夜尿症、月経前症候群、ジュニアアスリートの時差ぼけ、血圧等内科的疾患を扱っているものが10件みられた。

【考察】

筋骨格系の研究が多いことは、カイロプラクティック効果が判りやすいのではないかと考える。また、ポジティブ評価は、7割を超えていた。
内科的な慢性疾患を含む研究など、神経系の改善が推測できる研究も発表されている。
脊椎変位が神経系に影響を及ぼすとする考え方は、カイロプラクティックの特有のものである。
高齢者の腰痛患者に対して医師との共同によるケアを行うことが有効であるといった研究もあり、統合医療的なアプローチも進んでいると考えられる。
これらから、医療の中で神経筋骨格系に起因する様々な疾患において、カイロプラクティックの介入は有用である可能性があると考えられる。
今後の課題として、今回の調査は、カイロプラクティックのRCTについて、有効性に対する傾向を知るにとどまっているため、カイロプラクティック分野のシステマチックレビューを行う必要がある。

【結語】

統合医療において、脊椎変位疾患や、慢性疾患が神経筋骨格系に起因する場合には、WHOでは神経筋骨格系の専門とされているカイロプラクティックの介入が有用である可能性が示唆された。

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