一般社団法人 全日本カイロプラクティック学会
  ◎長尾正博 吉野俊司 松本吉正 山崎善秀

【目的】

カイロプラクティックで人工股関節への手術を回避できた一症例を報告する。

【方法】

  Hさん、女性、54歳、教員、主訴は左右の股関節痛。
  X-2年5月に股関節痛発症、病院で寛骨臼形成不全と説明を受け、同年8月に左股関節の骨切り術を行い、杖が必要となった。X-1年8月に右股関節も行った。再度股関節痛が酷くなり、X年8月に人工股関節への手術(X+1年3月実施)を予約した。痛くて歩行が遅く、少しの段差にも戸惑いがあった。仕事を続けて行く自信を無くし、辞めるしかないと考えていた。股関節痛の軽減を期待し、同僚の紹介でX年10月に当院を来院した。
  疼痛の評価はVASを用いた。
  ・階段の昇降時、股関節痛VAS 100。
  ・立ち座りに支障があり、立位で杖が必要。
  ・座位で左肩が5cm高い。
  ・頸椎C6,C7が前方変位。
  ・両下肢とも不安定でコントロールできない。
以上のことから、全身の筋骨格アンバランスと可動制限により、股関節痛が発生していると判断した。

【結果】

 X年10月、全身の筋骨格バランスと可動域改善を目的にカイロプラクティックを行った。
  1回の施術による疼痛軽減と体が軽くなった体感から、もっと改善できる期待を持てた。週2回の施術でX年12月には杖が不要となり、医師と相談して人工股関節への手術をやめた。X+1年1月に片足立ち、2月に両足ジャンプができて股関節痛はVAS 0まで改善された。3月には初診時の症状が全て改善できた。

【結論】

手術や生活習慣等の影響で全身の筋骨格アンバランスと可動制限が起こり、神経・血管・筋肉等が強く圧迫されると疼痛が生じたと考える。カイロプラクティックにより全身の筋骨格バランスと可動域を改善させたことで、股関節痛が解消したと考察する。
  本症例では、カイロプラクティックで人工股関節への手術を回避できた可能性がある。