日本のカイロプラクティック評価
「脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究」報告の真意を探る

一般社団法人 全日本カイロプラクティック学会
小野 久弥 山崎善秀 吉野俊司

【背景】

日本におけるカイロプラクティックの医学的評価は1991年、当時の厚生省が科学研究費を使って調査した「脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究」報告(以下、三浦レポート)である。この報告を機にカイロプラクティック施術に対して4項目の行政通知が各都道府県衛生部に送られ、カイロプラクティック施術に対しての規制を行った。
三浦レポートの内容には今日まで異議を唱える研究論文などが多数発表されているが現在、未だ三浦レポートからの呪縛は解けていない。

【目的】

三浦レポート発表当時の日本のカイロプラクティックを取り巻く時代背景や普及状況などを調査して、三浦レポート発表に至った経緯を検証すること。

【方法】

三浦レポート報告前約5年間の日本のカイロプラクティックの時代背景や教育状況などを当時の政府広報や新聞、業界紙などを調査して発表に至った経緯を確認した。

【結果】

1984年頃から日本では一般向けカイロプラクティック技術短期養成セミナーや営利主義の私塾などが台頭、粗悪な療法で50例以上の被害が全国的に発生していた。また1989年には「カイロ事故訴訟で3600万円の賠償命令」の有罪判決などが発生し、マスメディアを介してカイロプラクティック施術の問題点が全国に広まっていた。

【考察】

三浦レポート発表当時、未熟な技術の施術家からの危害を把握した厚生省が、カイロプラクティックを規制するために発表したものが三浦レポートであると考察。ゆえに、カイロプラクティック業界はその呪縛に未だ捉われているものと考える。

【結論】

三浦レポート発表に至った経緯は、当時カイロプラクティック技術一般向け短期技術セミナーなどが急増し、未熟な技術を使用することによる事故が多発したからである。

倫理的配慮:本研究参加者には、研究目的、方法、参加は自由意志で拒否による不利益はないこと、個人情報の保護について文書と口頭で説明を行い、同意を得た。