急性腰痛(ぎっくり腰)患者に対してカイロプラクティック施術で著効があった一症例

 一般社団法人全日本カイロプラクティック学会
小山尚、小野久弥、長尾正博

【目的】

平成22年度国民生活基礎調査(健康)によると、15歳以上の総症状有訴者3,654万人中、腰痛有訴者は1,299万人あり総症状有訴者の36%を占め、最も多かった。腰痛はおおよそ機能的、構造的、病理的な要素が起因すると言われているが、最近では腰痛の原因は心理的要素が関係するとの情報がクローズアップされるなど、腰痛には数多くの原因があると言われている。しかしここでは、その中でも急性腰痛(ぎっくり腰)患者に対して1回のカイロプラクティック施術で著効があった一症例を報告する。

【症例】

79歳男性 職業:運送業  主訴:労作時においての急性腰痛

 【現病歴】

平成26年4月、約5kgの商品を車両から降ろした後、前屈姿勢で商品を少し持ち上げ、上体を右に捻じったとき、腰部に激痛が生じ、動けなくなった。その後30分後に来院し、カイロプラクティック施術を行った。

【所見】

検査結果から、左仙腸関節における腸骨の後下方変位、骨盤の左回旋変位、仙骨の左傾斜、左回旋変位、腰椎生理彎曲の前彎減少(後方変位)、そして腰椎4番に右回旋変位が認められた。

【評価】

問診や、検査結果から、本腰痛の主原因は、腰椎3番神経根の圧迫障害と考えられた。

【治療・経過】

腰椎4番を左回旋矯正で正中線上に戻して、腰椎3番神経根の圧迫を開放したことにより、約1時間後には腰部の疼痛は解消された。

【考察】

本症例では、腰痛発症の直接原因が腰椎の回旋変位からくる椎間孔狭窄で、脊髄神経根を圧迫した結果であると考えられる。ときおり、神経根圧迫は下肢への神経根症状を呈するが、本症例では下肢への症状は発症していない。

【結語】

腰椎に可動性のあるアライメントの維持と、腰椎生理彎曲の前彎を維持することは腰痛改善と急性腰痛(ぎっくり腰)の予防にもつながる可能性があると考えられる。

©2015 All Nippon Chiropractic Association
無断転載を禁止します。