(社)全日本カイロプラクティック学会(ANCA)
山崎善秀

背景

カイロプラクティックの臨床において、関節に器質的・機能的な変化が生じた場合、原因以外の部位に痛みや痺れ、運動機能障害等が発症する場合が多い。

目的

 カイロプラクティックで上肢の可動障害が改善された一症例を報告すること。

症例

 57才、女性、主訴は左手を結帯動作した時に上肢の可動障害とそれに伴う上腕部の疼痛。

現病歴

 X年4月、車の後部座席の荷物を取ろうと左腕を伸ばしたところ、左肩全体に痛みが発症。整形外科でのX線は異常なし。冷湿布と鎮痛剤の処方と週2~3回の低周波、マッサージなどのリハビリを45日間継続したが、左上腕部の可動制限とそれに伴う疼痛が改善されずリハビリを一時中止。2ヶ月後当院に来院。初診時、左手首他動伸展角度45°・VAS60、左手結帯動作時に上腕部VAS70。

所見

 上体を左後方に捻って手を伸ばした時に左上肢に過剰なストレスがかかり、前腕部特に手根骨の可動制限が上肢の複合的な可動障害を起こし、上腕部に疼痛が発症していると推測。

評価

 左手首の他動伸展角度と痛みにVAS値を用いた。

治療・経過

 X年8月、左上肢の調整のためカイロプラクティックを1度行った。左手根関節の調整を行うことで肘、肩の可動もスムーズになり、結帯動作が無理なく出来るようになった。施術後、左手首他動伸展80°・VAS20、左手結帯動作時上腕部VAS30に改善された。その後、患者はADL(日常生活動作)に問題なく生活出来ている。

考察

 患者は肩関節周辺のリハビリを受けていたが改善が感じられなかった。カイロプラクティック診断によって、手根関節の可動制限が肩関節周辺の可動を妨げていると考えた。手根関節へのアプローチは上肢全体の過剰な筋緊張を緩和し、結帯動作が無理なく出来るようになった。結果として左上腕部の疼痛改善に繋がったと考える。

結論

 上肢の複合的な可動障害の改善にカイロプラクティックは有効である可能性がある。