社)全日本カイロプラクティック学会
山崎善秀・吉野俊司

目的

脊柱管狭窄症(以下狭窄症)の疼痛改善に患部以外へのカイロプラクティック(以下カイロ)が有効だった一症例を報告すること。

症例

62才、男性、主訴は歩行時の右下腿後面の疼痛。

現病歴

X年4月歩行時に右下腿後面に激痛を感じた。間欠跛行兆候あり。同5月病院で脊柱管狭窄症及びL4-5間の椎間板へルニアと診断され、週1回のリハビリテーションで腰部牽引と低周波治療を処方された。知人の紹介で、同5月来院。右下腿後面の疼痛・施術前ペインスケールVAS80。患者提供のMRI画像を確認。

所見

歩行時、体が左前傾斜、左右歩幅差異あり。右仙腸関節可動制限あり。腰椎や左右股関節の複合的可動が制限されていることで脊柱管に過度の負担が生じていると思われ、関節の複合的可動の回復が必要と考えて、カイロの適用が有効であると判断した。

評価

毎施術前後に右下腿後面の痛みをVAS値で判定、比較をした。

治療・経過

X年5月1~2週間毎に右仙腸関節の可動調整による全身バランスの回復を目
的としてカイロを行った。初診・VAS(前)80→(後)50、2回目・70→40、3回目・70→30、
4回目・60→20、5回目・60→20、6回目・50→10、7回目・50→10、8回目・30
→10、9回目・20→0、10回目・10→0の変化がみられた。また、間欠跛行の兆候も改善され、遠方への旅行にも行けるようになった。患者はリハビリテーションだけでなく、カイロとの相乗効果を実感している。

考察

狭窄症の患部を直接施術せずに周辺の関節や全身バランスを整えることで、患部の負担が軽減されたと考えられる。狭窄症や椎間板ヘルニアに対しては鎮痛剤の投与や外科的な手術が有効な方法とされているが、患者が鎮痛剤の長期連用や外科手術を望んでいない場合、カイロが神経圧迫緩和の一助になると考えられる。

結語

狭窄症の疼痛改善に患部以外へのカイロプラクティックは有効である可能性がある。