水泳による膝関節炎の疼痛に対しカイロプラクティックで効果があった一症例

一般社団法人全日本カイロプラクティック学会
松本吉正 吉野俊司 小野久弥 大槻佳広

【目的】

水泳のスポーツ障害による膝痛が再発した症例に対し、カイロプラクティックで効果があった1症例を報告する。

【症例】

35歳女性。主訴は膝痛。

【現病歴】

17歳の時、平泳ぎで膝痛を訴え外科に通院。ブレストストロークニーによる膝の関節炎と診断を受ける。治療は、両膝に鎮痛注射と温熱療法、鎮痛薬の服用。水泳引退後、違和感はあるが膝痛は無くなった。32歳の時、階段を降りた際、膝に激痛が走る。その後半年程かけて徐々に痛みが両膝に広がり、傾斜や段差には歩行困難をきたし、X年12月当院を受診した。

【所見】

視診にて左右の膝蓋骨に歪みが見られた。両膝蓋骨の下方内側周辺には熱感と腫脹があった。徒手検査では、両膝とも膝蓋骨周囲の炎症と内側側副靭帯の損傷が疑われた。

【評価】

痛みの判定にはVAS値を用いた。

【治療・経過】

施術前の両膝痛はVAS100であった。自宅でのケアと、週1回のカイロプラクティック施術を行った。3ヶ月程でVAS左55右68に減少した。膝痛が改善し腫脹が軽減すると痛みの強かった箇所に膝蓋の動きを明らかに制限する硬結が出現した。硬結に対しカイロプラクティック軟部組織テクニックで対応しながら、膝痛の改善治療を継続し、6ヶ月後には、VAS左15、右25に改善した。月1回の施術を現在も継続中である。

【考察】

現役時に疼痛管理のみを行った結果、軟部組織が硬結化し、膝関節の歪みが発生し、長期間使用が、動作制限と疼痛を再発させたと考えられる。カイロプラクティックにより歪みを修正し、硬結にカイロプラクティック軟部組織テクニックで改善したと考察する。特にスポーツ障害の治療は疼痛管理のみでは不十分で、動作状態や動作制限要因に対するアプローチがQOL向上には必須であると考える。

【結語】

痛みを中心とした疼痛管理と、身体機能を中心としたカイロプラクティックを併用することで、水泳のスポーツ障害による膝痛を軽減できた。

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