睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状緩和にカイロプラクティックが有効だった一症例

(社)全日本カイロプラクティック学会
山崎善秀 長尾正博 小山尚

(目的)

カイロプラクティックでSAS患者の症状が緩和された一症例を報告すること。

(症例)

49才、女性、身長152cm、体重52kg。主訴は日中の強い眠気。

(現病歴)

1年半前より日中に強い眠気を感じていた。X年1月病院でパルスオキシメトリー検査の結果、重度のSASと診断された。病院で処方されたCPAP療法を試したがマスクの違和感で2日後に断念、他マウスピースや外科的療法は実施していない。バイタル及び生理学的検査は異常なし。

(所見)

患者の姿勢が猫背で背筋群の過緊張があった。これにより睡眠時に自然な呼吸サイクルが出来ていないと推測される。頚椎及び腰椎・仙腸関節に変位はあったが、日常動作に支障をきたす可動制限はなし。

(評価)

パルスオキシメトリー検査の数値と立位側面姿勢の変化を比較・評価した。

(治療・経過)

X年4月カイロプラクティックを開始。1ヶ月目は週2回、2ヶ月目からは週1回、3ヶ月目からは隔週1回の施術を行った。また簡単な胸椎のストレッチも指導した。
X年1→6→9月の検査の結果、睡眠時無呼吸指数(Dip)>=2%45.0→8.35→19.8、>=3%36.1→4.82→12.8、>=4%30.1→3.05→8.8であり、睡眠中酸素飽和度(SpO2)平均値96%→96.07%→97%、最低値88%→86,8%→84%、脈拍数bpm(拍/分)平均値68→61.55→63、また睡眠1時間あたりの呼吸停止または低下指数(AHI・回/時)1月43,3、9月17,0の変化があった。立位側面姿勢の比較では猫背の改善もみられた。
尚6、9月には日中の強い眠気は改善された自覚症状がある。

(考察)

カイロプラクティックにより身体バランスが整ってきたことで背部の筋緊張が緩和され、睡眠時において頚部から胸郭部がリラックスした状態になったと考えられる。その結果SASの原因である気道閉塞が緩和され、自然な呼吸サイクルが回復したと考える。
課題として本症例の経過観察及び他のSAS患者にも同様の調査を行いたい。

(結論)

SASの症状緩和にカイロプラクティックは有効である可能性がある。

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