(社)全日本カイロプラクティック学会(ANCA)
山崎善秀 長尾正博

背景

 カイロプラクティックとストレッチを組み合わせることで症状の早期改善に繋がることがある。

目的

 カイロプラクティックとストレッチの併用で肩関節外転障害が改善された一症例を報告すること。

症例

 Hさん、67才、男性、学校講師。主訴は右肩外転障害及び上腕部の疼痛。

現病歴

 X年3月、右肩に張りを感じていたが、徐々に外転可動域の減少と上腕部疼痛により日常業務に支障が出ている。X年6月、自己判断で病院を受診する前に当院に来院した。初診時、右肩外転角度60°、VAS70。

所見

 猫背により頭部が前傾斜していた。問診より突発的症状ではないと考えた。職業上、板書やパソコンが多く、習慣的に肩関節周辺にストレスがかかり肩の外転可動域の減少及び上腕部疼痛の要因になっていると考えた。

評価

 肩関節の外転可動角度と上腕部の痛みにVAS値を用いた。

治療・経過

 X年6月、右上肢及び姿勢調整のためカイロプラクティックを1度行った。猫背が改善されたことで右上肢の可動がスムーズになった。施術後、右肩外転角度160°、VAS20。猫背の再発防止を目的に下腿後面と胸椎のストレッチを指導した。その後、肩の可動域減少や上腕部疼痛は出ていない。

考察

 カイロプラクティック診断では発生機序を重視する。生活習慣から自然に姿勢が変位してきたことで、右肩関節の可動障害と上腕部疼痛を発症したと考えた。胸椎へのアプローチは肩周辺の過剰な筋緊張を緩和し、外転動作がスムーズに出来るようになったと考える。施術とストレッチの併用により効果を持続させ、右上腕部の疼痛の早期改善に繋がったと考える。Covid-19に起因する施術者と利用者の三密回避にも貢献できると考える。

結論

 本症例における右肩外転障害の早期改善にはカイロプラクティックとストレッチの併用が有効である可能性がある。