一般社団法人 全日本カイロプラクティック学会
吉野俊司 松本吉正 長尾正博 山崎善秀
【目的】
大腸がん手術後の便意に伴う痛みがカイロプラクティックで軽減した一症例を報告する。
【方法】
Yさん 91歳 男性 主訴は便意に伴う痛み。
X年10月腹痛のために受診した病院の検査で大腸がんが発見され、同年12月に腹腔鏡手術でS状結腸と直腸の一部を切除した。病院では、手術後は自然回復を目的に経過観察であった。しかし、退院後も下痢に悩まされていたために、来院歴のあるYさんより相談を受けた。水様便は手術後に起こる症状であることと、便意に伴う痛みは改善できる可能性があることを説明し、痛みの改善を目的としてカイロプラクティックを受けることになった。
骨盤の歪みから骨盤の内腔内圧が上昇してS2神経に影響し、筋緊張が起こり下腹部に差し込むような痛みを伴っていたのではないかと考えた。
便意に伴う痛みの評価としてNRSを用いた。
(NRS:施術前の痛みを10として施術後の痛みを0から10までの11段階で示す簡易的評価方法)
【結果】
高齢者に対応した負担の少ないカイロプラクティックを、骨盤部への影響を考慮しつつ全身に行った。
初回の施術後、痛みは半減しNRS 5になった。施術の効果は維持され、1か月後2回目の施術では、NRSに変化はなかった。
【結論】
カイロプラクティックにより骨盤の可動性が回復し骨盤の内腔内圧が正常に戻ることでS2神経への影響が無くなり緊張が緩和された結果、便意に伴う痛みが改善したことで、患者のQOL向上に役立ったと考察する。
手術後における病院の自然緩解を目的とした保存療法にカイロプラクティックを併用することで、統合医療的チーム医療の一助につながると考える。
本症例により、大腸がん手術後の便意に伴う痛みが、カイロプラクティックで軽減した可能性がある。
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- カイロプラクティック, 下痢, 大腸がん, 統合医療