一般社団法人 全日本カイロプラクティック学会
小野 久弥 森田全紀 山崎善秀 大槻佳広

背景

1991年6月28日付で各都道府県衛生担当部(局)長あて厚生省健康政策局医事課長通知にて医業類似行為に対する取扱い指導があった。通知は「カイロプラクティック療法は施術の対象とすることが適当でない禁忌対象17疾患の認識をはじめその他3項目の指導」であった。この通知はその後大きな反響や批判を招いた。しかし、現在も見直しの再通知はない。

目的

厚生省通知当時(以下通知当時)のカイロプラクティック禁忌対象疾患の認識と、現在世界的に認識されている禁忌対象疾患、および日本における禁忌対象疾患の認識や取り扱いについての差異を明確にする。

方法

通知当時のカイロプラクティック禁忌対象疾患の指導内容と2005年に世界保健機関(以下WHO)より発表された、カイロプラクティックの安全性に対するガイドライン2007年に発表された厚生労働科学研究費補助金対象研究のカイロプラクティック等における禁忌症ガイドラインでの取り扱いの差異について調査した。

結果

通知当時は、17種類の疾患すべてが禁忌対象であった。しかし2005年WHOのガイドラインまた2007年全国療術研究財団発表のカイロプラクティックの安全性に対するガイドラインでは、禁忌症と合併症そして適応症にまで言及されており、また禁忌症についても絶対禁忌と相対禁忌の対処法が明記されていた。

考察

通知当時の指導内容にはカイロプラクティックへの根強い偏見があり、操作的にカイロプラクティックを国民から遠ざける為の内容であった。しかし日本では現在国際基準のカイロプラクターが増加、安全性に対するガイドライン発行により安全性への信頼性が向上し、健康被害を減らすことができると考察する。

結論

2005年WHO発表のガイドラインおよび2007年全国療術研究財団発表の安全性に対するガイドラインでは、患者を主体とした適切なカイロプラクティックケアの安全対策が明確化された内容であった。