社)全日本カイロプラクティック学会
吉野俊司、大槻佳広、松本清香

背景

カイロプラクティックでは、症状を作る機能的異常に対してアプローチする手法をとる。その対象を「サブラクセーション」と呼んでいる。そのため、原因が同じである症状が解消されている現状が見受けられる。今回は「サブラクセーション」を筋骨格の機能的異常としてとらえてみた。

目的

カイロプラクティックによる腰痛改善時の副訴への状況調査を行う。

方法

調査に同意済み当院利用者の電子カルテ2年分(2014/4/1~2016/3/31)を使い、腰痛を主訴とし、副訴1つが記載されているものを抽出。主訴・副訴の施術前後の評価はVAS値を用いた。(施術前のVAS値=0を除く)
主訴腰痛の内VAS値が減少したものを対象に、副訴のVAS値変化を、1)VAS値減少、2) VAS値変化なし、3) VAS値増加、それぞれの件数を出した。

結果

主訴腰痛145件中、対象は139件であった。
1) VAS値減少は125件89.93%、2) VAS値変化なしは13件9.35%、3) VAS値増加は1件0.72%であった。

考察

VAS値変化無しの13件9.35%を除く126件90.65%の増減は、主訴と副訴の原因が同じ、あるいは関連があることを示すと考える。これは、症状ではなく筋骨格の機能的異常に原因を求めアプローチするカイロプラクティックだからこその結果と考える。特に、VAS値変化126件中125件(99.20%)のVAS値減少は、サブラクセーションが副訴を含めた身体全体へのVAS値減少に貢献していると考える。
VAS値変化無しは、腰痛の原因とは関連性の無い単独のものだったと考える。
仮説として、筋骨格系の機能的異常は、必ずしも一つの症状を作るとは限らないと考える。
課題として、サブラクセーションへの施術をより明確にするために、他の症状についても調査することが必要と思われる。

結語

カイロプラクティックは、サブラクセーションを対象に施術を行うことによって、主訴など特定症状の改善だけではなく、副訴ともいえる各部位に出ている諸問題が総合的に改善できる可能性がある。