骨折に起因する全身症状にカイロプラクティックが有効だった一症例

 (社)全日本カイロプラクティック学会(ANCA)
山崎善秀・小野久弥・森田全紀・小山尚

(目的)

骨折に起因する関節の可動障害と疼痛がカイロプラクティックにより改善された一症例を報告すること。

(症例)

71才、女性、主訴は橈骨骨折後から発症した関節可動制限と前腕部から上半身に広がる疼痛。

(現病歴)

X年6月後方転倒で左橈骨遠位端骨折。ギブス固定が効果なく、7月プレート固定をした。8月同病院でホットパック、低周波、マッサージのリハビリテーションを受けたが、左手首から肘、肩及び首から背中にかけての張りや痛みが改善せず熟睡が出来ない。担当医に症状を訴えるが「患部の手術は問題なく、今痛みが出るのはやむを得ない」との説明を受ける。その後リハビリテーションを休止し、8月下旬当院に来院した。初診時の施術前ペインスケールVAS80、左肩関節の外転角度100°

(所見)

転倒時、骨折部から手根骨、肘、肩、脊柱まで捻じれや関節可動障害をおこしたことで、神経圧迫や筋緊張があり、肘関節の伸展と肩関節の外転に制限があった。

(評価)

毎回、施術前に左前腕から左上半身に広がる痛みの程度をVAS値で判定し、また左肩関節の外転角度の比較をした。

(治療・経過)

X年8月2~3日に1度の間隔で手根骨、肘、肩関節、脊柱の関節可動の改善によって神経圧迫と全身バランスの回復を目的としてカイロプラクティックを行った。2回目VAS60・外転140°(以下同順)、3回目60・160°、4回目40・160°、5回目20・160°、6回目20・160°、7回目10・180°の改善がみられた。尚、カイロ施術期間中は病院のリハビリは休止した。

(考察)

転倒時の衝撃は患部のみならず全身にまで影響を及ぼし、関節可動・神経伝達障害をおこしたと考えられる。骨折箇所の回復だけでなく、カイロプラクティックで全身の機能的な不具合を解消することは患者本来のQOLやADLを早期に取り戻す一助になると考える。

(結語)

骨折に伴う関節の可動障害及び疼痛にカイロプラクティックは有効である可能性がある。

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